【解答・解説】平成28年度 北大理学院 熱・統計力学 

【院試解答】平成28年度北海道大学理学院 物理 問題4    院試物理
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問1:準静的熱サイクル

1-1.

系の外部に対して、正味、正の仕事をするので、熱機関である。

1-2.

(a)1, 2 (b)3, 4

1-3.

(1) 体積が一定なので
\begin{align*}
&dU = d’Q\\
&Q_1 = \int C_VdT\\
& \ \ = C_V\left(\frac{P_2V_1}{nR} – \frac{P_1V_1}{nR} \right)
\end{align*}

(2) 圧力が一定であることより

\begin{align*}
&d’Q = dU + PdV\\
& \ \ = C_VdT + P_2dV\\
&Q_2 = C_V\left(\frac{P_2V_2}{nR} – \frac{P_2V_1}{nR} \right) + P_2(V_2 – V_1)
\end{align*}

(3) (1)と同じく

\begin{align*}
&dU = d’Q\\
&Q_3 = \int C_VdT\\
& \ \ = C_V\left(\frac{P_1V_2}{nR} – \frac{P_2V_2}{nR} \right)
\end{align*}

(4) (2)と同じく

\begin{align*}
&d’Q = dU + PdV\\
& \ \ = C_VdT + P_2dV\\
&Q_2 = C_V\left(\frac{P_1V_1}{nR} – \frac{P_1V_2}{nR} \right) + P_1(V_1 – V_2)
\end{align*}

1-4.

気体が外部にした正味の仕事は、サイクルのグラフが囲む面積に相当するので

$$W = (P_2 – P_1)(V_2 – V_1)$$

に等しい。よって

$$\eta = \frac{W}{Q_1 + Q_2}$$

1-5.

2原子分子の場合\(C_V = \frac{5}{2}nR\)であるから

\begin{align*}
\eta &= \frac{P_1V_1}{\frac{5}{2}P_1V_1 + 5P_1V_1 + 2P_1V_1}
&= \frac{2}{19}
\end{align*}

一方、理論上のカルノーサイクルの熱効率は

$$\eta_C = \frac{T_2 – T_1}{T_2} = \frac{3}{4}$$

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問2:2準位系の統計力学

2-1.

分配関数は

\begin{align*}
Z &= \displaystyle\sum_{i}e^{-\beta E_i}\\
&= g_1 + g_2e^{-\beta\Delta}
\end{align*}

よって、ヘルムホルツ自由エネルギーは

\begin{align*}
F &= – \frac{1}{\beta}logZ\\
&= – \frac{1}{\beta}log(g_1 + g_2e^{-\beta\Delta})
\end{align*}

2-2.

内部エネルギーは

\begin{align*}
U &= -\frac{\partial}{\partial \beta}logZ \\
&= \frac{\Delta g_2e^{-\beta\Delta}}{g_1 + g_2e^{-\beta\Delta}}
\end{align*}

よって、エントロピーは

\begin{align*}
S &= \frac{1}{T}(U – F)\\
&= k_Blog(g_1 + g_2e^{-\beta\Delta}) \\
& \ + \frac{1}{T}\frac{\Delta g_2e^{-\beta\Delta}}{g_1 + g_2e^{-\beta\Delta}}
\end{align*}

よって、\(T \rightarrow \infty\)のとき、\(e^{-\beta\Delta}\rightarrow \)となるから

$$S = k_Blog(g_1 + g_2)$$

2-3.

比熱は

\begin{align*}
C &= \frac{\partial U}{\partial T}\\
&= \frac{\partial \beta}{\partial T}\frac{\partial }{\partial \beta}\left(\frac{\Delta g_2e^{-\beta\Delta}}{g_1 + g_2e^{-\beta\Delta}} \right)\\
&=g_1g_2k_B\left(\frac{\Delta}{k_BT}\right)^2\frac{e^{\frac{\Delta}{k_BT}}}{\left(g_1e^{\frac{\Delta}{k_BT}} + g_2\right)^2}
\end{align*}

2-4.

\(\frac{k_BT}{\Delta} = x\)とおくと

$$C = g_1g_2k_B\frac{e^{\frac{1}{x}}}{x^2\left(g_1e^{\frac{1}{x}} + g_2\right)^2}$$

よって、
・\(x \ll 1\)のとき、\(x\)が増加すると、\(C\)は\(e^{-\frac{1}{x}}\)によって、急激に増加する。
・\(1 \ll x\)のとき、(x\)が増加すると、\(C\)は\(\frac{1}{x^2}\)によって減少する。

以上より、比熱のグラフは、\(x\)を横軸に取ることで一つのピークを持つ。


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