【静電エネルギー】3. n個の点電荷の静電エネルギーを導出する

電磁気学
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この記事では, 3個以上の点電荷の静電エネルギーを導出します. 2個の場合については図を用いて解説していますので, もう少し基礎的な所から理解したい方には, 次の記事がおすすめです.

前回は2つの点電荷のエネルギーを導出しました. その際には, 無限遠に置かれた2つの点電荷\(q_1, q_2\)を, それぞれ位置\(\mathbf{r}_1, \mathbf{r}_2\)に運ぶために要する仕事を求めました. そして, 全過程で必要とした仕事こそが「静電エネルギー」であることを確認しました. 本記事では, そのアイデアを拡張し,

  • 電荷が3個だと, 静電エネルギーはどうなるか.
  • 更に, 任意のn個の電荷の場合の静電エネルギーはどのように表せるか.

これらの場合について考え, 点電荷の数と静電エネルギーの関係について, 丁寧に数式化していきます.

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1. 点電荷が3つの場合

3個の点電荷\(q_1, q_2, q_3\)が, それぞれ位置\(\mathbf{r}_1, \mathbf{r}_2, \mathbf{r}_3\)にある時の位置エネルギー, つまり静電エネルギーを求める.

①2個の点電荷を運んでくるまで

前回の記事のように, まず2個の点電荷\(q_1, q_2\)を無限遠から位置\(\mathbf{r}_1, \mathbf{r}_2\)まで運ぶ. これに必要な仕事は,

$$U_1 = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1 q_2}{|\mathbf{r}_1 – \mathbf{r}_2|} \ …(1)$$

であった.

②3個目の電荷を運んでくる

第3の点電荷\(q_3\)wp無限遠から\(\mathbf{r}_3\)まで運ぶことを考える. 今度は, \(q_3\)を, 点電荷\(q_1, q_2\)のつくる電場中で動かすことになる. したがって, ③で必要な仕事は, \(q_1, q_2\)が位置\(\mathbf{r}_3\)につくるポテンシャル(電位)に\(q_3\)をかけたものになる.

ここで,

n 個の点電荷\(q_1, q_2, … q_n\) がそれぞれ位置\(\mathbf{r}_1, \mathbf{r}_2, …\mathbf{r}_n\)にあるときの点\(\mathbf{r}\)における電位は,
$$\phi (\mathbf{r}) = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\displaystyle \sum_{i=1}^n\frac{q_i}{|\mathbf{r} – \mathbf{r}_i|}$$

※これは一見複雑な関係式に見えるが, 各々の点電荷の作る電位(無限遠基準)を単に足し合わせている(重ね合わせている)だけである.

により, \(q_1, q_2\)による電位\(\phi (\mathbf{r})\)

$$\phi (\mathbf{r}) = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1}{|\mathbf{r} – \mathbf{r}_1|} + \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_2}{|\mathbf{r} – \mathbf{r}_2|} \ …(2)$$

これを用いると, 点電荷\(q_3\)を位置\(\mathbf{r}_3\)に運ぶのに要する仕事は,

\begin{align*}
U_2 &= q_3 \phi (\mathbf{r}_3)\\
&= \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1}{|\mathbf{r}_3 – \mathbf{r}_1|} + \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_2}{|\mathbf{r}_3 – \mathbf{r}_2|}
\end{align*}

で与えられる.

③3個の電荷の静電エネルギー

3個の電荷の静電エネルギーは, 3個の電荷が無限遠にある状態から, それぞれ位置\(\mathbf{r}_1, \mathbf{r}_2, \mathbf{r}_3\)に運ぶために必要な仕事である. よって,
(1)(2)で求めた仕事を足し合わせる.

\begin{align*}
U_3 &= U_1 + U_2\\
&= \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1 q_2}{|\mathbf{r}_1 – \mathbf{r}_2|} + \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1}{|\mathbf{r}_3 – \mathbf{r}_1|} + \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_2}{|\mathbf{r}_3 – \mathbf{r}_2|}
\end{align*}

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2. 点電荷がn個の場合

点電荷が2個, 3個の議論を拡張し, 無限遠にあるn個の点電荷を, それぞれ位置\(\mathbf{r}_1, \mathbf{r}_2, …\mathbf{r}_n\)に運ぶのに要する仕事を求めることで, 点電荷がn個ある時の静電エネルギーを, 次のような和で表すことができる.

i) 点電荷がn個ある時の静電エネルギー

$$U = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\displaystyle \sum_{(i, j)}^{n}\frac{q_iq_j}{|\mathbf{r}_i – \mathbf{r}_j|} \ …(3)$$

\(\displaystyle \sum_{(i, j)}^{n}\)は, n個の電荷の内, 2つをペアとする時のすべての組み合わせについて, 和を取ることに相当する.

ii) 和の表式を変えてみる

(3)の和をとるときに, i, jの各々について i = j となるペアは避けて, 1からnまで足し合わせたとする. すると, 例えば(2, 3)という組は, i = 2, j = 3と i = 3, j = 2の2組を表し, 全ての組に2重数えが起きてしまう. 結果, \(U\)の値が(3)の2倍になることを考慮する必要がある. したがって, (3)は

$$U = \frac{1}{8\pi\varepsilon_0}\displaystyle \sum_{i \ne j}^{n}\sum_{j \ne i}^{n}\frac{q_iq_j}{|\mathbf{r}_i – \mathbf{r}_j|} \ …(4)$$

のようにも表すことができる.

iii) (q_i\)以外の電荷による電位\phi ‘_iを用いた表式

(4)で i を止め, j について1~nまで i を除いて和を取った※ものは, “\(q_i\)以外の電荷による, \(q_i\)の位置\(\mathbf{r}_i\)における電位” = \(\phi ‘_i\)である. これを用いて,

\begin{align*}
& U = \frac{1}{2}\displaystyle \sum_{i=1}^n q_i\phi ‘_i\\
& \phi ‘_i = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\displaystyle \sum_{j \ne i}^{n}\frac{q_j}{|\mathbf{r}_i – \mathbf{r}_j|} \ …(5)
\end{align*}

のように簡潔に記述することができる.

※ペアの選び方
まず i を止めてから, i = j 以外となる j と i をペアとする.
i = 1の時,(i, j) = (1, 2), (1, 3), … (1, n)の全ペアについての項の和をとる.
i = 2では(i, j) = (2, 1), (2, 3), … (2, n)の全ペアについての和を取る.

i = nでは(i, j) = (n, 1), (n, 2), … (n, n – 1)の全ペアについての和を取る.
i = 1~nそれぞれで得られた和を, 更にすべて足し合わせるので, (5)のように表現することができる.

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